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「発達障害」の子8.8%、4割は支援受けず 小中の通常学級

 全国の公立小中学校の通常学級に通う児童生徒の8・8%に、発達障害=キーワード=の可能性があることが13日、文部科学省の調査でわかった。


35人学級であれば1クラスあたり3人程度いることになる。

このうち4割強は、授業中に丁寧な指導を受けられるようにする配慮・支援を受けていなかった。識者は、専門知識がある教員による個々の児童生徒の特性に応じた支援態勢の強化が必要だと指摘する。


 調査は10年ごとに行われ今回は今年1~2月に実施。全国の公立小中高校の児童生徒から約8万9千人を抽出し、学習障害(LD)、注意欠如・多動症(ADHD)、高機能自閉症に関する質問が当てはまるかを担任教員らが回答。回答率は84・6%だった。この調査では、医師による発達障害の診断は行われていない。


 調査結果によると、「学習面または行動面で著しい困難を示す」とされた、発達障害の可能性がある小中学生の割合は8・8%(男子12・1%、女子5・4%)だった。今回と前回の調査は一部の質問内容が異なるため単純比較できないが、2012年の前回調査時の6・5%より増えた。今回から調査対象になった高校生は2・2%だった。


 調査事項などを検討した有識者会議の座長を務めた宮崎英憲・全国特別支援教育推進連盟理事長は、小中で割合が増えたことについて「教員や保護者の理解が進み、以前なら見過ごされてきた困難のある子どもに目を向けるようになったことが一つの理由として考えられる」などと解説する。


 ただ、発達障害の可能性がある児童生徒への支援は途上にある。8・8%の児童生徒のうち、教員が丁寧に指導できるよう座席を教員の近くに置いたり、少人数指導の対象にしたりといった支援・配慮を授業中に受けていたのは54・9%(前回44・6%)、受けていなかったのは43・2%(同49・9%)だった。通常学級に在籍しつつ、一部は別教室で学ぶ「通級指導」を受けているのは10・6%(同3・9%)にとどまった。教員らによる「校内委員会」で支援が必要と判断され、学校として支援していくことが決まっていたのは28・7%(同18・4%)だった。(桑原紀彦)


 ■文字苦手、端末使えばできるのに/教員知識不足も

 保護者からは、個々の児童生徒の特性に応じた支援を求める声が上がる。だが、特性は様々な上、担当教員は専門知識がある人ばかりではない。


 都内の中1の男子生徒は、地元の公立中の通級指導に疑問を感じ、今春、私立中に進んだ。

 学力は低くないが、文字を読むことや手書きすることが苦手で学習が進まない。母親によると、小学校の通級指導では、個別指導の時間と、小集団によるコミュニケーション能力を高める指導の時間があった。


 ただ、男子児童はコミュニケーションに支障はなく、途中で参加を中止。個別指導では、担当教員は読み書きが苦手な子についての専門知識が少なく、関連教材を紹介するなどして理解してもらうよう頼んだ。


 教科書の文章を音声で読み上げるツールの使用などを認めるよう学校に何度も求め、授業などでの端末使用を認めてもらった。テストのとき、問題を教員に読み上げてもらうことや、作文を書く際、手書きではなく端末で入力することも認められた。


 だが、地元の公立中へ進む前に、中学の通級指導の担当教員と面談したところ、1人1台の端末が配布されてはいたが、定期試験での配慮はしてもらえないとわかった。「不登校になりかねないし、高校進学もできないと思った」と母親。受験して入った私立中では、端末やデジタル教科書などをフル活用して学ぶことができ、定期試験でも多くの配慮を受けることができた。「なぜ公立ではできないのか疑問です」


 都内の公立小の養護教諭は「行動面で困難のある子と違い、読み書きなど学習面で苦手なことがある子たちは、おとなしければ困難を抱える子として校内で認識されず、放置される例が多い」と指摘する。教諭の勤務校では、保健室登校をしている児童の半数程度は読み書きなどの学習障害(LD)の傾向がある子だという。「そうした子たちを支援するには、教員の専門性も人数も、圧倒的に足りない。教員の育成も含めて根本的な改革が必要」と話す。


 上野一彦・東京学芸大名誉教授(臨床発達心理学)は「通常学級に発達障害の傾向がある児童生徒が一定数いるとの認識が広がり、通級指導や教員研修の制度は次第に整ってきている」。ただ、教員の専門性が不足している場合もあり、個々の特性にあった効果的な教育支援がされず、LDの傾向がある子にも、注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症の傾向がある子と、同じような対応をしている例も少なくないと指摘する。


「例えば米国の学校には、専門知識のある教員が配置され、いつでも個々の特性に応じた教育が受けられる部屋がある。そうした部屋を各校に設けるなどして、効果的な指導、支援の態勢を強化することが必要だ」(編集委員・宮坂麻子


 ◆キーワード

 <発達障害> 生まれつきの脳の働き方に起因するといわれ、読み、書き、計算など特定の学習に困難が認められる「学習障害(LD)」、落ち着きがない、注意が持続しにくいといった「注意欠如・多動症(ADHD)」、コミュニケーションで言葉や表情などを用いてやり取りしたり、相手の気持ちを読み取ったりするのが苦手な「自閉スペクトラム症」などが含まれる。





<朝日新聞 2022年12月14日>

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