文部科学省は2024年度にも、小中高校と、障害のある子が通う特別支援学校を一体化して運営する試行事業を始める方針を固めた。互いの学校を児童生徒が行き来して授業を受け、教員も教えることで障害の有無に関わらず一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」を進めたい考えだ。
障害のある児童生徒らが通常の学級で学ぶための支援策を議論する文科省の有識者会議が9日、こうした施策を盛り込んだ提言案を大筋で了承した。
文科省によると、一体化により児童生徒が障害の有無に関わらず一緒に学習することで、障害のない子が障害のある子の特性について理解を深められる。障害のある子も、ない子と接し、多様な授業に触れる機会が増える。
文科省の調査では、公立小中学校の通常学級に通う児童生徒の8・8%に発達障害の可能性がある。これ以外にも身体障害や知的障害のある子が通常学級で学ぶケースもあり、一体運営により、専門性の高い特別支援学校の教員が教壇に立つことで教育の質が高まることが期待される。一方、小中高校の教員にとっても、特別支援学校の教員や児童生徒と触れ合い、指導のノウハウを吸収できるメリットがあるという。
先行事例もある。12年に開校した兵庫県立阪神昆陽(こや)高校と、高等部のみの阪神昆陽特別支援学校はインクルーシブ教育を目的に、同じ敷地内に設置された。校長は同じで教員も両校で指導できる。単位制の阪神昆陽高では特別支援学校の授業を卒業単位に算入でき、特別支援学校では時間割に阪神昆陽高の授業を組み入れているという。
文科省は24年度にも、試行事業でこのような一体的運営を行う小中高と特別支援学校を募集し、成果や課題を洗い出したうえで、取り組みを全国的に広げたいとしている。
国連の障害者権利委員会は昨秋、障害児を分離する現状の特別支援教育をやめるよう勧告。インクルーシブ教育確立のためにすべての障害のある児童生徒が個別支援を受けられるよう計画を立てるといった対応の必要性を指摘していた。
(朝日新聞/2023年3月10日)
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