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発達障害の働き手、活躍へ後押し 頻繁に面談、困り事やスキル把握 多様な業務を用意しマッチング



 発達障害がある働き手は増えており、社会人になってから診断を受けて気付く人も少なくありません。

企業に義務付ける障害者の「法定雇用率」が引き上がる中、企業には働きやすい環境づくりを進める動きが広がっています


 横浜市の亀山さんは、人材派遣大手スタッフサービスグループの事務業務を担う「スタッフサービス・ビジネスサポート」に勤める。

発達障害があるが、職場の上司は日頃から話しかけてくれ、業務などの疑問や不安、希望もすぐに相談できる。

「話を聞いてもらえる機会が豊富にあることが、働く上で安心感につながっている」


 自身が発達障害であることは、働き始めてから知った。

 きっかけは、建築資材の施工管理を担当した会社での勤務。

入社3年目ごろから仕事量が増え、1人で10件を超える現場を同時に担当するようになった。業務が立て込むと、図面を見ても数字が頭に入らなかったり、段取りを飛ばしたりとミスが続いて、落ち込むことが増えた。


 しばらくして心療内科に通うようになると、発達障害と診断された。30歳のときだ。

「子どものころから忘れ物が多いなど、自分には何かあると思っていたが、ようやく病名がついたと思った」


 会社を辞め、そのまま約4年を過ごした。

「自分がつぶれてしまった事実があり、働く自信がもてなかった」という。


 2020年、自治体の広報誌に「ひきこもりの相談窓口」を見つけて相談に行ったことが足がかりとなり、就労移行支援事業所に通い始めた。

実習に取り組んだほか、面接練習などをこなして、22年冬に現在の会社に入社した。


 同社では、発達障害のほか、身体、知的、精神などの障害者が一緒に働く。

業務推進部の和田厚志ゼネラルマネージャーは「入社後は、多くの面談機会を作り、困りごとを解消する機会を増やしている」という。

グループ内の多様な仕事を受託し、個々のスキルや関心に合った仕事のマッチングをめざす。


 亀山さんも上司と相談しながら業務の幅を広げてきた。

「知らなかったことに触れられる、分かるようになるのは楽しい」。

業務一つ一つを丁寧に自信をもって取り組み、他のスタッフもサポートできるように。そんな新しい目標も芽生え始めている。


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 東京都の40代女性も、仕事が続かず苦しんだ後、発達障害の診断を受けてから新しい仕事への道が開けた。


 学生時代の就職活動は「自己分析、企業分析って何ですかというところでつまずき、消去法で会社を決めた」と振り返る。


 1社目では、通勤電車に乗っていて吐き気を感じるようになり、1年弱で退職。

 2社目では、冗談を受け流せずに嫌な思いをし、場の空気を読めず上司を怒らせた。

上司に「もう来なくていい」と告げられて辞めたという。


 「働くことは合っていないのか」。自信を失い、ふさぎ込む日が続いた。


 27歳になるころ、発達障害を取り上げたテレビ番組を目にした。

病院に行くと広汎(こうはん)性発達障害と診断を受け、環境変化が苦手なことなどを指摘された。

「仕事でうまくいかないと感じていたことが、障害によるものだと分かってホッとした」


 現在は、障害者向け就業支援や人材サービスを手がける「パーソルダイバース」に障害者枠で勤務する。


 職場では、雑音や周囲の視線が気になるときは、耳栓やパーティションが使える。

上司に話しかけると、「ちょっと待って」ではなく「5分待って」などと具体的に指示してくれるため、コミュニケーションで戸惑うことが減ったという。


 同社では、上司が部下の得意なことを把握して、新たな業務に取り組む機会を後押しする。女性も普段は求人原稿の修正などを担当するが、数年前には、新入社員の研修で講師役を任された

自分なりに資料をつくり、研修期間を終えると達成感があった。


 「少しずつやりたいこと、できることが増えてうれしい。職場環境が整っているからこそ、仕事で力を発揮できると思う」



■企業の枠超え、工夫や配慮を共有

 発達障害の人が働きやすい職場づくりを進める企業は増え、企業や団体の枠を超えた取り組みも広がりつつある。


 ソフトバンクは16年から、精神・発達障害の人を対象に「ショートタイムワーク」制度を導入した。

体調に合わせて4時間勤務を週1日など短時間で働くことができる。


 制度を使う従業員は、各部門から寄せられた「手が回っていない業務」を担う。

多様性・情報化推進課の横溝知美さんは「日本型雇用では、長時間労働で何でもできる人が求められることが多い。

ショートタイムワークでは一つのスキルで働ける。

柔軟な働き方で、働く一歩としてもらえたら」と話す。


 ソフトバンクはさらに、同じようにショートタイムワークを導入、支援する企業や自治体など200超の団体が参加するアライアンスを立ち上げ、事例共有といった交流も深めている。


 発達障害を含めた脳や神経に由来する特性を、多様性として尊重する「ニューロダイバーシティー」


この考え方を学び合う場として、武田薬品工業が中心となって「日本橋ニューロダイバーシティプロジェクト」が22年に発足した。花王や三井不動産など16の企業や団体が参加する。


 プロジェクトでは定期的に勉強会を開催。

4月には発達障害のある当事者の体験談を聞きながら、採用時や職場でどのような配慮が必要か、意見を交わした。


 発達障害当事者で、企業向け研修などを担うNPO法人DDAC(発達障害をもつ大人の会)代表の広野ゆいさんは「『(障害がある人に)配慮してあげよう』ではなく、いろいろな違いをもつ人が一緒に働き、成果を出せる環境を創造していくことが、持続可能な組織をつくると思う」と話す。


■受け入れへ6割「課題ある」

 今年4月施行の改正障害者雇用促進法で、企業に義務付ける障害者の「法定雇用率」は2.3%から2.5%に引き上げられた。26年には2.7%となる予定だ。


 厚生労働省の23年度の障害者雇用実態調査では、民間企業が雇用した障害者は110万7千人と、初めて100万人を超えた。

その約半数が身体障害だが、身体障害の雇用者数のうち50歳以上が6割超を占める。


 一方、発達障害は20~30代が7割を占める。若手採用をめざす企業が注目し、働く発達障害の人は9万1千人と18年度調査から2倍以上増えた。


 だが、発達障害を含む精神障害が雇用義務の対象に加えられたのは18年。

受け入れ環境の整備が進まない企業も少なくない。

23年度調査では、6割超の企業が「雇用上の課題がある」と回答。

「採用時に適性、能力を十分把握できるか」といった課題を挙げる企業が多かった。



2024年6月17日 朝日新聞 朝刊より 

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